2年前の課題
近場の壁にて
悔しくはあるもギアや技術など至らず敗退。昨シーズンは寒波と休みの都合が合わず取り付くこともできなかった。
今シーズン暖冬で絶望視していたが今回の寒波に休みがあい絶好のタイミング。
しかしパートナーが体調を崩して独りとなる。落石を避けるために早めの登攀開始が必要で、ウロ覚えなところを思い出しておきたいと偵察。あくまでも偵察と言いながらいちおうイボイノシシやハーケンを慌てて購入して。
3時に起床。しかしチビの寝かし付けとかのために、後回しだった準備をやってると軽く1時間経過。ゴタゴタして出発したが駐車しようと考えていた場所の数100メートル手前で車が動かなくなる。スタッドレスだけでは限界、しかしチェーンを持ってくるのを忘れてしまった。それを理由に、前回敗退した恐怖からいっそ山登りに変更でもとよぎったが道端に車を捨てて歩く。大崩沢、見応えがある。
作業道を詰めて砂防ダムを越える。最後の砂防ダムに6:30過ぎ、結果ベストなタイミング。寒いが一昨年のような馬鹿げた積雪はなく石が見えるので登りやすい。しかしその分、頭大の石も軽く動く。落石が恐い。落石が恐く飛ばしまくる。右手から出合う幾つかの沢からも落石は始まってないが大岩の影で都度、息を整える。
沢が狭まりF1越えたかな、と思った瞬間強烈に見覚えのあるF2が目に入った。
その瞬間、あれ?という感覚。やけに壁が小さく見える。ビビりまくって上がってきて、見たら帰ろうと決めていたのに。行けるかな。
前回は雨のように降ってきていた右壁も不気味に静か。左壁ににじり寄る。取り付き。
足元と頭上を見上げる。取り付いたら最後、抜けるしか無くなる。
思わず、取り付いた。必死で登る。数m登り傾斜が緩くなる箇所、凍土と石が混じっていてバイルが効かない。段々と腕が効かなくなる、ヤバい、と焦り始めた時に視界に何かが入る。凍りついたカラビナ。
(写真中央、右の岩と正面の壁の境に黒カラビナ)
必死に自確用のカラビナをかける。
比較的新しい。去年師匠が登った際の残置(※天と地の間)だと確信。とはいえ効き具合も分からないハーケンに全体重はかけられないので片手分の荷重だけ預けて片手ずつレスト。しかし充分に回復、まだ悪いながらかなりこのカラビナに勇気をもらい身体を上げる。もう一本こちらは完全に錆びきったハーケンを発見、しかし精神安定剤程度の効果しかない。段々と緩くなる傾斜に身体を這いつくばらせて突破。
思わず叫んだ。
左壁に入って中央の岩とのコーナーをつく様に登る。。。
(右下青丸マークのすぐ左に、1枚目写真のN字状の壁が)
核心を抜けると快適な雪壁、しかし昨年師匠&小原ペアは雪崩に遭遇しているので用心しながら。早目に稜線へ出てしまい少し苦労したが、雪崩の心配なければとにかく崩壊の始まる突端まで詰めていけば崩壊して閉鎖された登山道に行き当たる。
(赤線のすぐ上にトレイルが見て取れる)
雪が少ないが冷たくて暗い北面から御鉢廻りに出ると驚くような積雪。気温は心なしか暖かい。
雪がそう多くないが噛んだヌンチャクがしばらく唇から離れなかった位だったので気温は低かったのだろう。結局落石の巣に入りながら一つも落石を見ることが無かったのはそのお陰か。とにかくコンディションに恵まれた。
そして何と言ってもあのカラビナ。腕が張りパニックになりかけていた時に、目に入った瞬間、ビビッときた(古)。欲しい所、しかし頑張って手を伸ばさないと届かない絶妙な位置。下山後問い合わせるとやはり師匠が打ったものにセカンドがかけたカラビナだったらしい。一昨年のリベンジをソロで果たせた、というよりは様々な条件に恵まれて良かった、というのが本当に正直な所。
貴重な寒波に今年最初の会心の登りができたことに感謝。
夜のビールのなんと沁みたことか。落ちなくて良かった。